小鯛は血鯛のことであり、別名花鯛と呼ぶ。真鯛とちがい大きくはならない。大きくなっても40㎝位である。真鯛に酷似するが、頭部の傾斜は急峻で、尾びれの後縁は黒くない。

 おいしい時期は春から夏。
 産卵期も真鯛の4月から6月とは異なり9月から11月である。
 真鯛の子は鯛子と呼び、小鯛とはきっちり区別している。
 焼いた魚の肉質も小鯛の方が柔らかくておいしい。こんな至福をもたらす鯛だが、近年人気がなくなっている。中骨が硬いせいなのか、鯛の種類とかの情報が足りないのかよくわからない感がある。

 しかし、鶴岡では初夏から夏にかけての「小鯛の塩ふり焼き」を食べたいと、いまなお人気だ。

 藤沢作品には「三屋清左衛門残日録」と「凶刃用心棒日月抄」の中の梅雨時の場面に小鯛がしっかりと登場している。

 魚の旬をばずしていないのには、ただ驚くばかりである。

庄内浜文化伝道師協会 会長 石塚 亮 (旅館坂本屋)