なによりも「おいしいもの」が大好きという人は大勢いる。わたしもその中の一人である。

そして料理人の端くれでもある。「おいしいもの」を提供する側でもある。お客様においしいと言ってもらうためには、こちら側も「おいしいもの」を知っていなければならない。
その「おいしいもの」を探すのも仕事であり、わたしにとっては楽しみでもある。

ジャンルは問わない。酒のおつまみから甘いスイーツまでいろんなおいしさを知りたい。ほんものを知りたい。食は体感しなければ真価を味わうことはできないものだ。

だから、本物の寿司、本物の蕎麦、本物のてんぷらが日本でないと味わえないものだということを知ることが重要。

それぞれの食材の、あるいはそれぞれの有名料理の源流を味わってみなければ、本質的にその料理を理解したことにはならないからだ。

日本国内に限らずその土地で感じた情緒、見た土地の風景、その土地の建物や街の色を見て、体験して身についた見識とか美的感覚は、料理をつくるにおいて少なからず影響すると思う。
本を読んで学ぶ知識だけではなく、体験の積み重ねによって作られる見識が重要な意味を持つのだ。

庄内浜文化伝道師協会 会長 石塚 亮(旅館坂本屋)