新しい料理が生まれる時・・・
それはいつも考えに考えて追いこんでいくものではないと思っています。
ただ、心の中にいつも「なにか新しい、いい料理を作りたい。」という気持ちがあって、その時々の事柄がヒントになり、発展してものになっていくのだと思います。
例えばここに鱒といういい素材があります。それを見て、料理をイメージ(想像)していきます。頭の部分は氷頭を使って酢の物に、この魚のハラスは厚さがあるので凍らせてルイべ風刺身に、ひれのあるカマの部分は大きい切り身にして定番の素焼きに、しっぽの部分は身を少しつけて揚物に、鱒は香のある魚なので厚めに切りあっさりとおろし煮に、といろいろ想像していくわけです。
そんな中で取り合わせるのはなにか、野菜をどう入れるか、味はどうするか、どんな味が適切かなどと創造してします。
ある日常連のお客様が不意に来られて献立を急に組み立てなければいけない。
今ある材料でなにかいつもと違うものを作らなければいけない時、思念の中では何度も作る自分を思い描いていたけれど、出来上がりの場面がはっきり見えなかったあの料理をと!
そういう時に新しい料理が生まれるのです。だからいつも頭の中にいろいろな要素を入れ込み、何かのはずみで飛び出すようなものかもしれないと思います。
そして、その組み合わせ方がその人そのひとのセンスでもあるわけです。
庄内浜文化伝道師協会 会長 石塚 亮 (旅館坂本屋)